aim音楽教室 湘南・藤沢

湘南・藤沢市にある音楽教室。ギター・ヴォーカル・DTMのレッスンをしています。

練習だと調子いいのに本番だと上手くいかない問題(音響編 その2 )

 今回は、自宅などで生声で歌っている時と、ライブ会場とでどう音響が変わってしまうのかを、具体的に見ていきましょう。

 ライブ会場では(あるいはカラオケボックスでも)、このような形をしたマイクを使いますよね。

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 実は様々なマイクにも、それぞれの周波数特性いうものがあって、これが完全な真っ平らではありません。一般的に使われるダイナミック・マイクというものは、だいたい下の図のような形になります。

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 これはどういうことかと言うと、マイクを通しただけで、低い音は減って、高い音が増える、ということになります。

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 ほんのわずかな差のようにも見えますが、人間の感覚というのはとても敏感なので、マイクを持って喋っただけで「あれ?いつもと違う」と感じるようになります。グラフでちょっと持ち上がった所は、4kHz(キロヘルツ)辺りであることも多いです。人間の耳につきやすい音域なので、人によっては「あれ、なんか格好良くなったかも」と思うかもしれません。
 ところが人によっては、逆に低音が減ったことにより「あれ?いつも出してるはずの低音が響かない...声が軽い...今日は調子が悪いのかな?」モヤモヤと混乱し始めるかもしれません。

 これは、歌い手本人が悪いわけでも、マイクが悪いわけでもありません。そして、実際はもっと複雑になります。

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 マイクを通したあと、実際に音が出るのはスピーカーからなわけですが、この間にも様々な周辺機器を通ります。その周辺機器にも色々な特性があるのですが、ここでは無視できるほど小さいので省略します。
 無視できないぐらい大きな差を生むのは、スピーカーの「サイズ」です。

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 大きい、小さいが、どれぐらいか?と言うと、お店の天井から吊り下がっていて圧迫感のないようなものは「小さいスピーカー」。床に置いたり、専用の台に載せないとちょっと怖い感じがするのは「大きいスピーカー」です。

 もちろん機器によって違いはありますが、小さいスピーカーはあまり低音が出ません。さらに厄介なのは、この特性が「音量によって変化する」ということです。ボリュームを大きくすればするほど、低い音も高い音も出にくくなり、中音域に耳障りなピークができたりします。(小さなラジカセを目一杯大きい音で鳴らすと、聞き苦しい音になりますよね。ああいう現象です)

 そして、次の問題が一番深刻です。部屋によって、響きが変わるのです。

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図の赤い線は、スピーカーから直接耳に届く音。青い線は、部屋のあちこちに反射してから、耳に届く音です。これは部屋の造りや、壁、床、天井の材質によっても大きく変わります。また、リハーサルでほとんど誰もいない時と、観客が大勢入った時でも、大きく異なります(主に衣類が音を吸収するからです)。

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 会場(部屋)の特性というのは、だいたい上の青い線のようになることが多いかもしれません。高い音は色々なもの(主に柔らかそうなもの)に吸収されますが、低い音はあまり吸収されず、あちこちぶつかって回るからです。

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 最終的に耳に届く音は、上の図の紫の線のように、とてもいびつな形になるでしょう。これはほんの一例ですが、この形の場合、歌い手にとってどんな悪影響を及ぼすでしょう?

 低音を出すのが得意だった人は、普段通りに出すと「モワッ」とするので、自然と抑えるようになります。普段はのびのびと身体を使った正しい発声をしていたとしても、喉声で軽く出した方が「モワッとしない」ので、歌い方自体を変えてしまう人も多いでしょう。

 また、少し高い所にピークがある場合も、あまり張らなくても声が大きくなったような気がして、いつのまにか腹式呼吸による正しい発声ではなく、喉声で歌ってしまうことがあります。張ると、場合によっては「キーン」と嫌なハウリングを起こしてしまうので、よりその傾向が強くなります。

 そうすると、実際に観客が聴く歌声はどうなるでしょう?「身体で支えた音ではないので、伸び伸びとしない、音程も不安定な震声のようなものが届くだけ」です。こうなると、ちょっと悲惨ですね。。

 そういったステージを経験したことがある人にとっては、想像しただけで怖い思い出が蘇ってきそうですが、では、どうしたらよいのでしょう?それを次回、解説いたします。