aim音楽教室 湘南・藤沢

湘南・藤沢市にある音楽教室。ギター・ヴォーカル・DTMのレッスンをしています。

練習だと調子いいのに本番だと上手くいかない問題(解決法 ヴォーカルの場合 )

では、どうすればいいのか?

そうならないように、あらかじめ音響のバランスを整えておくのが、当日リハーサルの役割です。


以下の3つぐらいのケースが考えられると思いますが、

1) PA(音響担当)がいる場合  ※ライブハウスなど
2) PAはいるが、十分にリハーサルの時間が取れない場合  ※イベントライブなど
3) PAがいない場合 ※ミキサーなどの機材はあるが、PAの知識を持ってる人がいない場合


1)の場合、お任せしてしまえば楽なようにも感じますが、自分のモニターバランスは自分で指示を出すしかありません。
ほとんどの場合、あらかじめ「これぐらいが歌いやすいだろう」というバランスは作っていてくれますが、周りの楽器奏者が大きい音を出すのが好みだった場合、当然ながら自分の声は小さくなり、聞こえにくくなってしまいます。

 

その時に、経験が浅いうちは「自分の耳がおかしいのかな?」ぐらいに済ませてしまったり、あるいは遠慮して言い出せずにただ時間が過ぎて終わりということもあるかもしれません。またその時に、「楽器の音がうるさいのか?」「モニターの音量が小さいだけなのか?」知識と経験がないとそれすら分からないと思います。それでも言い続けましょう。「なんか自分の歌が聞こえません」と。

 

その逆で、自分の声はよく聞こえるけれど、「なんかボワボワする」「なんかヒーンヒーンする」ということもあるでしょう。これが、前回に書いた、周波数バランスが悪い状態です。プロのPAさんがいる場合は、わざわざ「ローをカットして下さい」とか「2kHz辺りをちょっと下げて下さい」とか言う必要はありません(むしろ下手に言わない方がいいです)。そのまま、自分の言葉で「なんか、ボワンッ ボワンッ ってします」「なんか、大きい声出すとキーンとします」でいいので、とにかく伝えることにしましょう。

 

2)の場合、十分に解決できないまま時間が終わってしまったり、あるいはリハーサルの時間が全くない、みたいな場合もあると思います。

3)の場合は、自分でミキサーのEQ(イコライザー)ぐらいは理解して、調整できるようになっておくと、とても有利です。

 

 

さて、ここからが問題です。
しっかりリハーサルをして音の調整をしたはずなのに、本番始まってみたら「あら~、全然バランスが違う~」ということもよくあります。

コンサートをたくさん見ていると、プロアマ問わず、始まったばかりの頃は雰囲気が硬くて、後半になるにしたがって暖まってくるということがよくないでしょうか?これは、演奏しながら、歌いながら、ちょっとずつ自分の中で補正していくという実に緊張感のある作業をしているからでしょう。

楽器を弾く人間の場合は、普段からある程度音響については意識しているので、演奏しながら弾き方の修正を行って行きます。
ヴォーカリストの場合は、「どうして感じが違うのか、全然分からない…」→分からないから余計に緊張する→わけの分からない失敗をする、ということもあるかもしれません。

 

そんな時は、冷静に次のことを試してみましょう。

 

●マイクに近づけて歌っても、自分の声が小さくて聞こえない場合。


プロのコンサートなどでは、よくモニターを指差ししてから、指を上に上げるしぐさを見たことがあると思います。
これが正攻法ではありますが、これはPAが集中してボーカリストに注目してる場合はうまく行きますが、メジャー級のコンサートでもなければ、PAPAで色んなことでいっぱいで、ボーカリストを見ていない場合も多いです。見ていないのにこの仕草をやっても、かなり虚しいものがあります。

そんなときは、片手を耳に当ててみましょう。外部の音をシャットアウトして、声帯から自分の骨をつたって耳に届く音が聞こえてくるはずです。これでだいぶ音程が取りやすくなります。また、ずっと耳に手を当ててることによって、周りの楽器奏者も、PAも、いつかは「あ、聞こえにくいのかな」と気づいてくれ、何らかの対処を行ってくれるはずです。とても現実的で有効な方法です。

 

※自分一人でギター弾き語りをしてる場合は、自分のギターの音量を下げましょう。弾くのに忙しくてボリュームで下げられない場合は、弱く弾いて音量を下げます。

 


●逆に自分の声はよく聞こえるけれど、なんか気持ちよくない場合

 

これが、モニタースピーカーの周波数特性のバランスが悪い状態です。
あるいは、バランスが悪くなくても、自分の声が聞こえすぎるために、無意識に身体を使わず喉だけで歌ってしまうということも、やってしまいがちです。
そうすると、当然ピッチも安定しません。

専門的な知識も要らず、もっとも簡単な方法は「マイクとの距離を取ること」です。
マイクと口の距離を少し離して、思いっきり声を出してみましょう。いつものように「身体全体を使って声を出してる」という感覚をつかめたら、しめたものです。

とても簡単なことのようですが、誰かに言われないと、意外に気付けないことかもしれません。




と色々書いてきましたが、いざ本番だけ上手くやろうとしても、中々うまくはいかないでしょう。
そのために、常日頃の練習が大事になります。自分でミキサーをいじって、「わざと自分の声を小さめに」あるいは「大きめに」して歌ってみて、「その状態からどうやって修正するか?」そういうことも実体験としてシミュレーションをしておくと、だいぶ心に余裕ができると思います。

みなさまが、本来の実力を本番で発揮できますよう、一助となれば幸いです。

練習だと調子いいのに本番だと上手くいかない問題(音響編 その2 )

 今回は、自宅などで生声で歌っている時と、ライブ会場とでどう音響が変わってしまうのかを、具体的に見ていきましょう。

 ライブ会場では(あるいはカラオケボックスでも)、このような形をしたマイクを使いますよね。

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 実は様々なマイクにも、それぞれの周波数特性いうものがあって、これが完全な真っ平らではありません。一般的に使われるダイナミック・マイクというものは、だいたい下の図のような形になります。

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 これはどういうことかと言うと、マイクを通しただけで、低い音は減って、高い音が増える、ということになります。

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 ほんのわずかな差のようにも見えますが、人間の感覚というのはとても敏感なので、マイクを持って喋っただけで「あれ?いつもと違う」と感じるようになります。グラフでちょっと持ち上がった所は、4kHz(キロヘルツ)辺りであることも多いです。人間の耳につきやすい音域なので、人によっては「あれ、なんか格好良くなったかも」と思うかもしれません。
 ところが人によっては、逆に低音が減ったことにより「あれ?いつも出してるはずの低音が響かない...声が軽い...今日は調子が悪いのかな?」モヤモヤと混乱し始めるかもしれません。

 これは、歌い手本人が悪いわけでも、マイクが悪いわけでもありません。そして、実際はもっと複雑になります。

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 マイクを通したあと、実際に音が出るのはスピーカーからなわけですが、この間にも様々な周辺機器を通ります。その周辺機器にも色々な特性があるのですが、ここでは無視できるほど小さいので省略します。
 無視できないぐらい大きな差を生むのは、スピーカーの「サイズ」です。

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 大きい、小さいが、どれぐらいか?と言うと、お店の天井から吊り下がっていて圧迫感のないようなものは「小さいスピーカー」。床に置いたり、専用の台に載せないとちょっと怖い感じがするのは「大きいスピーカー」です。

 もちろん機器によって違いはありますが、小さいスピーカーはあまり低音が出ません。さらに厄介なのは、この特性が「音量によって変化する」ということです。ボリュームを大きくすればするほど、低い音も高い音も出にくくなり、中音域に耳障りなピークができたりします。(小さなラジカセを目一杯大きい音で鳴らすと、聞き苦しい音になりますよね。ああいう現象です)

 そして、次の問題が一番深刻です。部屋によって、響きが変わるのです。

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図の赤い線は、スピーカーから直接耳に届く音。青い線は、部屋のあちこちに反射してから、耳に届く音です。これは部屋の造りや、壁、床、天井の材質によっても大きく変わります。また、リハーサルでほとんど誰もいない時と、観客が大勢入った時でも、大きく異なります(主に衣類が音を吸収するからです)。

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 会場(部屋)の特性というのは、だいたい上の青い線のようになることが多いかもしれません。高い音は色々なもの(主に柔らかそうなもの)に吸収されますが、低い音はあまり吸収されず、あちこちぶつかって回るからです。

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 最終的に耳に届く音は、上の図の紫の線のように、とてもいびつな形になるでしょう。これはほんの一例ですが、この形の場合、歌い手にとってどんな悪影響を及ぼすでしょう?

 低音を出すのが得意だった人は、普段通りに出すと「モワッ」とするので、自然と抑えるようになります。普段はのびのびと身体を使った正しい発声をしていたとしても、喉声で軽く出した方が「モワッとしない」ので、歌い方自体を変えてしまう人も多いでしょう。

 また、少し高い所にピークがある場合も、あまり張らなくても声が大きくなったような気がして、いつのまにか腹式呼吸による正しい発声ではなく、喉声で歌ってしまうことがあります。張ると、場合によっては「キーン」と嫌なハウリングを起こしてしまうので、よりその傾向が強くなります。

 そうすると、実際に観客が聴く歌声はどうなるでしょう?「身体で支えた音ではないので、伸び伸びとしない、音程も不安定な震声のようなものが届くだけ」です。こうなると、ちょっと悲惨ですね。。

 そういったステージを経験したことがある人にとっては、想像しただけで怖い思い出が蘇ってきそうですが、では、どうしたらよいのでしょう?それを次回、解説いたします。

 

練習だと調子いいのに本番だと上手くいかない問題(音響編 その1 )

 aim音楽教室は、ヴォーカルもギターもDTMも、いっぺんに習えてしまう教室です。

 7~8割の生徒さんはひとつの科目で受講されてますが、他の科目にも興味が出てきて同時に習っている方も、2~3割いらっしゃいます。

 さて、初回は何を書こうかと思いましたが、ヴォーカリストにもギタリストにもDTMer(ソングライター)にも、全員に役に立ちそうなことにしてみました。

 

 「発声の仕方」とか「音楽理論」などは丁寧に説明しているサイトはたくさんあるので、ここではちょっと変わった視点から書いてみることにします。簡単に言うと「音響」についてです。

 かつては「パフォーマーはそういうこと知らなくていい」「専門的なことはその道にプロに任せろ」という意見が一般的でした。今でも、あるレベルではその通りだと思います。けれどもPCとネットの発達により、誰もが自分で作品を仕上げたり、発表できる時代になり、だいぶ様相が変わってきました。

 「一人で歌ったり演奏してる時はいいけれど、いざ録音、録画してみたり、またライブで人前でやってみると、なんか思うように上手くいかない」そんな悩みをよく聞きます。それはもちろんメンタルの部分もあるのですが、その前に音響について確かに知識を持っていないことが原因であることがとても多いように思われます。

 せっかく「音を楽しもう」としてるのに、「音の響き」について無頓着なんて…
なんて、もったいない!


というわけで、早速本題に入って行きましょう

周波数特性グラフ



 これは「周波数特性グラフ」というものを、簡略化して描いたものです。
 左の縦軸「dB」はデシベルと読みます。なんとなく聞いたことがあるでしょうか?音の大きさを表します。

 今回大事なのは横軸の「周波数」の方です。「Hz」はヘルツ呼びます。これも健康器具のCMかなんかで耳にしたことがあるかもしれません。20ヘルツは、1秒間に20回、空気が振動しているということです。

 

 人間の歌声は、だいたい1キロヘルツ(1000ヘルツ)辺りと覚えておきましょう。(学術的にはもっと低い所にあると思いますが、音楽をやる上で分かりやすい表現にします)

 マイクを使って喋ったり歌ったりすると「キーン」と嫌な音がした経験がある人は多いと思います。
 また、初めて録音した自分の声を聞いた時、「これ誰?私?」と思ったことはないでしょうか?こういうのも、周波数ということを頭に入れておくと、謎が解けるようになります。

 

 さて、アコースティック・ギターはどうでしょう?グラフで見るとずいぶん広いですね。つまり人間の声よりも低い音や高い音が出るということです。

 アコースティック・ギターで弾き語りをする人はたくさん見かけますが、ベース弾き語りとか、エレキギター弾き語りはあまり見かけませんよね。それは、アコースティック・ギターほどは音域が広くないので、物足りなく感じてしまうからでしょう。歌だけのアカペラというのも、超絶に歌の上手い人なら聴かせられるでしょうが、それでも長時間となるとちょっとツラいかもしれません。

周波数特性グラフ エレキギター

周波数特性グラフ ベース


 人間って実は、低い音から高い音までまんべんなく綺麗に出ている音を「心地よい」と感じるようです。海の音や川の流れる音、いわゆる癒しと呼ばれるような自然の音を録音して周波数を見てみると、このグラフが綺麗に平らになります。何か大きなヒントがあるように感じます。

このままずっと話し続けられそうですが、第1回目なので今日はこの辺で。